津波に備えた防災を考える 【防災バッグ 03】

2022.3.04
ごきげんよう、
ロシア、ウクライナ情勢は日々戦況が変化しているので余談を許さなくなっていますね。核戦争についても備えるべきかと最近本気で考えておりますシロクマです。
ただいま、近所の喫茶店でモーニングをいただきながら執筆しております。

天然ガス高騰に引き摺られてエネルギー全般と、小麦やコーンの輸出国同士の戦争のために穀物価格も上がるようです。向こう半年くらいは光熱費や食費が上がるのは避けられそうにないですね…
明日にでも冗談みたいに突然、ロシアが「ごめんなさい」したりしないもんでしょうかねぇ…

ともあれ今日はシリーズの第3回目となっております。前2回を読んでいないと根本的な勘違いをしてしまうと思います。まだ読んでいないよという方はよろしければ下記を一読いただければと思います。

>第1回「走って逃げるで本当にいいですか?」
>第2回「防災バッグを4つに分けて考える」

前回はうっかりボリュームが増えてしまいましたので、今回の記事は実質2.5回といっていい立ち位置で「大地震対策と大津波対策との考え方の違い」についてフォーカスしていけたらなと思います。

地震対策用の非常持出し袋で本当にいいの?

 地震は揺れそのものに耐える事さえできれば、その後の避難での安全確保には余裕を持ちやすくなります。
 それに比べて南海トラフ沖大地震における津波警戒区域での避難は「余裕のある避難行動」は期待できません。ここからは「準備していても死んでしまう可能性」、また「その後に見つけてもらえない可能性」について実例も交えて確認していければと思います。

これまでのおさらいと津波警戒区域

まずは南海トラフ沖大地震による津波のスペックについておさらいしておきましょう。第1回に記載しましたリストを下記に転載しておきましす。

  • 地震発生から最短2分で津波が沿岸部に到達しはじめる
  • 津波は到達後はミニバイクほどの速度で陸地を駆け上がってくる
    (↑ウサインボルトよりちょい早い、斜面をかけおりる熊ぐらいか?)
  • 津波の高さは最大で10mに達することもありうると試算されている
    (↑だいたいガンダムの腰位ですね(しらんがな )
  • 津波浸水の際は水位がひざの高さよりも深くなると歩けなくなる
  • 波が引いた後でも水はけが悪い地域では孤島になり、救助が遅延する

手短にざっくり言いますと「気づくと自宅がデッドエリア!?」ということが十分にあり得るということになります。
では有事の際、皆さんのご自宅は「デッドエリア」なのかご承知でしょうか?
実はこういった情報はお住いの各地方自治体から配布されているハザードマップに詳しく記載されていたりするのですが…
おそらくご覧になっている方々におかれましては「知らない、見たことない、覚えていない」のスリーコンボがキレーに決まっているのでは?と拝察いたしております。(失礼

そんな「平日に市役所なんか行ってられないYo!!」という忙しい方にお勧めなのがこちら↓
ご存じ  「重ねるハザードマップ」(※1)でございます。
このサイトでは、日本全国の地図に対して各地方自治体の様々な災害情報を地図上に重ねて表示することができます。

引用元:【重ねるハザードマップ】より高知県 高知県周辺


画像では高知県の高知駅周辺を中心に東西5㎞の地図に対して津波時の浸水域を重ねています。
この地図上で色のついた地域では浸水がヒザ上まで達すると想定されています。
つまり「津波に追いつかれると流される地域」とまで言ってしまってよいでしょう。

注意喚起という意味合いからもう一枚
下のエリアは高知県とは四国山脈を挟んで反対側の瀬戸内海側、香川県高松市周辺の津波による浸水域でございます。
土地勘のある方であれば「おや?」お気づきかと思いますが、讃岐平野の中央を2本の天井川が流れているというこの地形では津波が河川を逆流することで海岸線よりもむしろ内陸側の市内中心部の広い地域で最大5mに達しかねない浸水の被害が予想されております。

引用元:【重ねるハザードマップ】より香川県 高松市周辺

「自宅周辺は海から距離があるから大丈夫」という楽観は禁物でございます。
まずは何より自宅周辺のハザードマップ情報を確認しましょう。そう、この記事を読むまぇni・・・
(最後の参照欄にリンク先を張っておきますので… ごにょごにょ)

さて、みなさんのお住いの地域はいかがでしょうか。もし津波や河川の氾濫などで水害の危険がある地域にお住いの場合は、寝ている間に、或いはちょっとニュースから目を離した隙に「気が付いた時には既に時遅し、もはや逃げる手段すらない、助けも来ない」ということが冗談ではなく起きかねません。

地震対策用の装備ではこのような膝がつかるような水害には実に脆弱です。
足を滑らせただけ、鋭利な破片を踏み抜いただけで詰んでしまいます。
逆流によってマンホールの蓋が吹き飛び気が付かづに落下などという不幸が嘘みたいに道端に転がっています。

ちなみに僕の自宅についても住み始めてから調べた次第でございます。たまたま津波警戒区域(デッドエリア)ではなくまたその他の水害にも強い地域と建物の作りだったので個人的には一安心しています。ただ「津波警戒区域でない」=「安全地帯」ということではありません。大地震による震災ではどのような複合災害が発生するかわからないということを改めて確認しておきましょう。

地震に準備していても危険 ~津波被害に潜むさまざまな危険~

津波に限らず水害では想像もつかない危険が襲ってきます。今日は東日本大震災の折に起きた津波に関する危険を振り返ることで津波にはどのような備えが必要か考えていきましょう。

1.落下事故
 津波に限らず何かしらの洪水が起きた際、にごった水流によって足元が見えにくくなることがあります。こうした時に起きる怖いのがマンホールや側溝への落下事故です。特に雨水などを下水に逃している地域ではあふれた水が逆流することでマンホールのフタを押し上げたりします。慣れた道だとおもって暗がりの中を適当に歩いていると汚水にダイビングしかねませんよ。それで済めばいいんですがねぇ…
 是非ともそんな時は外に出ない、出なければいけない時は杖になる物を持ち足元を確かめつつ、さらに手掛かりを確保しつつ移動しましょう。

2.対流への巻き込み
 浸水深さがヒザの高さを超えてしまうと歩行困難になります。これが流水の場合は一歩も動くことができなくなります。ひどい場合は立っていられない、流されるといった状況になります。もし避難しようとした時には既に浸水深さが足首を超えてさらにどんどん増えているようであれば、特別な用意もなく外へ出るのは逆に危険な行為になるかもしれません。
 また市街地で津波に遭遇した際、波はとても複雑に対流しており、下向きの渦にのまれてしまうと、足のつく深さの浸水であったとしても自力で水面に浮かび続けると言うのは困難と言えるます。何でもよいので浮く物に抱き着きましょう。2ℓの空のペットボトルをお腹に抱えるだけでも全然違うようですよ。

3.土砂や瓦礫をともなう濁流
 津波はさまざまなものを巻き込みながら大量の水が押し寄せます。津波はさまざまなものを壊しながら進行するため市街地などでは波の中には、小さな金属片や砕けたガラス、大小さまざまな木片など、本当にありとあらゆるものが渦巻いております。
 例えるなら洗濯機やミキサーの中に手を突っ込むのとそう変わらないと思っていただければ、津波に直に飲み込まれるのが如何に危険かご想像いただけるのではないでしょうか。まず間違えても素手ではいけないでしょう。近くに頑強な建物や乗り物があるのなら速やかに逃げ込みましょう。

4.津波火災
町ごと押し流すような津波災害の場合、車両やガソリンスタンドから油などが流失してしまいます。それらが水に浮きながらたゆたい送電線などを原因に着火することで、津波は火属性までエンチャントしてしまいます。下は洪水、上は大火事でございます。洒落になりませんね…
 この津波火災は市街地において木造家屋などを燃やしながら水流に乗ってとんでもない勢いで広がっていきます。もし、自宅の屋根などに避難した際にこの津波火災に巻き込まれてしまうと逃げ場を失うことになってしまいます。お住まいの近くにガソリンスタンドがあるお宅は普段から十分に備えておきましょう。逃げるにしても消火活動をするにしてもです。

5. 引き波の破壊力
 津波災害の際よく聞くことの一つに「引き波に気をつけろ」というものがあります。ここで言われる「引き波」は「大津波が来る前の前兆現象」と「押し寄せた津波が海に戻っていく現象」の2種類の事象を指して区別なく言われてるように思います。そのため受け手の我々も雑な理解をしてしまってはいないでしょうか。僕としまては(もちろんどちらも危険な現象ではあるものの)破壊力という意味において後者の方が圧倒的に危険だと考えてます。どういうことなのか簡単に説明しましょう。
 津波として一度押し寄せた押し波は河川を遡上します。広がりながら山を駆け上がろことで十分に位置エネルギーを蓄えた波は、第二波や第三波に引き寄せらることで今度は斜面を激烈な勢いで斜面を下り始めます。広がりっ来た波が押し波よりも速い速度で河川や低地に流れ込んでいきます。

 つまり、特に河川付近や下流域では上流の方から押し波よりも激しい津波が流れ落ちてくるということです。津波というよりも近年話題となっている線状降水帯などが原因で起きる鉄砲水や土砂崩れを思い浮かべた方がイメージは近いのではないでしょうか。
 東日本大震災の折に水の合流地点では、コンクリート製の建物ですら海側になぎ倒されていたということです。押し波の勢いが止まったからといって油断せず。可能な限り高く頑丈なところを目指して逃げ続けましょう。

6. 孤立する安全地帯
 津波がおさまった後でも、地域によっては何日も水が引かない場所が点在します。適切な避難行動で一命を取り留めても、その後の避難経路が浸水や瓦礫など閉じ込められ正に陸の孤島になります。
 こうなってしまうと特別な装備がない限り、ヘリコプターなどでの救助を待つしかなくなります。つまり、日本全土の半分が被災地という状況で来るの分からない救助の順番が自分にまわってくるのをひたすら待つということです。震災直後は今にも死にそうな人にリソースが集中することを考えると長いと3日はそこに留まることになりかねません。
 実際に東日本大震災の折、高所から自力で降りられなくなった方が続出したとのことで縄ばしごや脚立の1つがないために救助できない、ということがずっと起きていたといいます(※2)。またゴムボートや救助浮き輪がまったくたりていなかったという話も伺えます。
 泳ぐための浮袋やちょっとしたロープなどを持っておくだけでも、被災後の避難行動がグッとらくになるでしょう。

1~6までについて
 上から順に津波の進行に合わせて潜んでいる脅威についてザックリ書き出してみました。ここまで読んできた皆さまは既にお気づきかと思いますが、これら6つの危険は通常の地震対策用の緊急避難袋だけでは対処不能でございます。
 よしんば「1」をクリアできたとしても「2」以後が襲ってきた場合ではすぐに積んでしまいます。上記した内容以外にも荷物が水没してたらライトや充電器などはどうなるのか?着替えはなくて大丈夫か?考え始めればきりがありません。
 津波被害警戒区域や類するところにお住まいの方は是非とも通常の地震対策だけでなく、「水」そのものに対する配慮が本当に充分なのか、予めて考えておく必要があるのではないでしょうか。

「死んでも帰る」という考え方

 半年ほど前のことです。東日本大震災の後日に津波被害者を海中から引き上げるボランティアをされた方からお話を聞く機会がありました。当時の本当に悲惨な状況について様々に伺うことができたのですが。その中でも特に僕の印象に残ったのが引き上げの取捨選択という内容についてでした。
 ご家族の元に連れ帰ることのできたご遺体の多くが車内や、屋内の広い空間にいらっしゃったと言うことした。言外に語られたことを察するに、潜水時間に上限がある中で、瓦礫に埋もれてしまったり沖合まで流させれしまったご遺体を優先することができなかったのだろうと思います。
 また、車内のような比較的強固な空間から帰られた方々は比較的綺麗なお姿だったということからも、そうではなかったご不幸は想像に難くありません。痛ましい話だと思いつつも、帰還されたことで報われる思いもあるのだなと考えさせられるお話でした。

 また、本稿を書くにあたって、改めてネットで調べられる範囲で多くの映像や文献をあさる中で上記のエピソードを裏付けるような資料(※3)に行き当たりました。
 この資料は1933年に起きた昭和三陸地震による津波被害について2003年に改めてまとめられた物なのです。この記事では死者と行方不明者の比率について言及されていました。特に

 重要な問題点は、死亡したと見做されるにもかかわらず、検死によって身元が確認された者の数は約半数に過ぎず、残りの半数の人々は行方不明になっていること、言葉を変えて云えば、実際の死者の約半数の遺体、要するに2人の中の1人は(哀れにも海の藻屑と化して)遺体が発見されなかったか、あるいは発見されはしたが死体の傷みが激しいために、何処の誰かも身元が判明しなかったということである。

http://www.histeq.jp/kaishi_18/29-Yamashita.pdf

という一文に目が止まりました。これに関する形で「何故このようなことが起きたのか」についても記載がありました。簡略にまとめると①引き波によって溺死者の半数が沖合に運び出されてしまったこと、②被災後のさまざまな所要により捜索がほどんどなされたかった、ということでした。
(全文ご覧になりたい方は上記リンクか本稿下段の引用欄からご覧ください)

 2021年のデータで、東日本大震災では死者1万5899柱(12都道府県、徐 震災関連死)、行方不明者2526柱となっております。未だに震災後の特集番組を目にするたびに未帰還となっておられる方々のご家族がその後の思いを語られているのを拝見し、なんとも言えない気分になることがあります。
 もし今後、僕が行方不明者に連なってしまったらと考えた時、自分を思ってくれる家族を長く待ち人にさせてしまうのはやはり忍びないなと考えることが多くなりました。そのため、僕は津波避難用の非常持出し袋の目的には地震用のような「死なない」だけではなく「死んでも帰る」という考え方が必要だろうと、
 「ちょっとした波にのまれたくらいでは死なないし、万が一命を落としても自力で返る、たとえ指の一本でも形見の一つでも必ず帰る」
という強い思いを持って大津波には臨むべきなのではないかなと思うのであります。

まとめに変えて

※執筆中の筆者はしがき 03.07 0:52 現在
金曜日から書き始めたに全然筆が進まず・・・またさらに今回もボリュームが増えております。
やはりといいますか、人目に触れる場所に何かを寄稿するのだからと思うと結局あれこれと調べながらになってしまい、気が付くと文章をコネコネ、コピペの多様で文法ぐちゃぐちゃ・・・
以下、とりあえずオピニオンだけたてておいて、日々更新をしていければと思います。

※執筆中の筆者はしがき 03.17 12:02 現在
早いもので前回から素手の10日も立が、世界情勢が毎日変化にともなって株価の乱高下に一喜一憂してみたり、体調を崩して2〜3日ほど寝込んでいたりしていました。
 一昨日の夜には宮城県沖でM7.4最大震度6強の地震が発生したことでなかなかヒヤヒヤしている昨日今日でございます。本記事は今晩あたりには書き終えたいななんて思っているしだいでございます。

※執筆中の筆者はしがき 03.21 2:47 現在
 結局17日も当日中には書ききれず…
「引き波」について実はよく知らないぞ!! と思って調べ始めてたら沼でした いや波なんですがね…
書けば書くほどボリュームが増し増しになるので(あたりまえたいそー)ここにきて本稿を2つに割ろうかと悩み始めておる今日この頃でございます。
 いやーほんと 明日には書き終えたい!!

2022.03.22 まとめに変えて
3月4日に書き始めた本稿、気が付けばもう月末をうかがう勢いでございます。なんとも遅筆にて情けない次第…

 本稿を書き進めるに際して東日本大震災の記録映像をYouTubeであさっていたのですが、そのかたわらウクライナ情勢のニュースも様々に目にしておりました。震災直後の避難所の映像や3.11を振り返った今の被災地の映像と、まさしく現在ロシア侵攻による破壊活動から避難されているウクライナ一般国民の皆様の映像を一緒くたに見てしまった為に少々気持ちをもっていかれる執筆となりました。

 思った以上のボリュームになってしまったこともありますし…
次回のやっとこさ本編「津波避難用の緊急持ち出し袋のレシピ」を書き上げたら、本稿をもう少し整理して軽い読み口に書き換えたいなと反省している所存でございます。

ではまた シロクマ ノシ

引用元

※1 重ねるハザードマップ
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/?ll=34.33681,134.075947&z=14&base=pale&vs=c1j0l0u0t0h0z0
地震や津波にとどまらず、自分の暮らしている周辺地域のさまざまな災害情報について感覚的にとらえられるサイトです。距離計測などのツールも充実しているので避難ルートの想定などにも使えとても便利です。

※2 自衛隊だけが撮った0311- そこにある命を救いたい- 
https://www.youtube.com/watch?v=pIdQj14i3xI
本稿執筆に限らず、地震災害や津波被害に備えるにあたって何度も見直している映像でございます。
記事関連の映像は45:55からとなります

※3 津波における「引き波の恐怖」
‐昭和三陸津波の死者数と行方不明者数の比率の意味するもの‐
歴史地震 第 18 号(2002) 183-187 頁
著:山 下 文 男  
http://www.histeq.jp/kaishi_18/29-Yamashita.pdf
引き波について、雑なイメージしかなかった筆者がありこちさまよう中で拝見した資料です。
【その後、見つけてもらえない】の数字としての裏付けになる資料であるため参照させていただきました。

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